『「夕張問題」』

「夕張問題」とは言うまでも無く夕張市財政破綻とその再建にまつわる問題のこと。本書は夕張市が破綻に至った経緯と再建策について書かれている。
近隣に住む著者の強い思い入れゆえか内容が夕張市のことに限定されていて、「地方自治体の破綻」についての一般的な考察が少ないことが少し残念だった。ちなみに私が今住んでいる市も破綻が危惧されており、破綻を避けて健全な市政をとりもどすために市民が何をすればよいかをの参考にと本書を読んでみたのだが、正直言うとあまり参考にはならなかった。本書はあくまで現象の記述と当面の対策の提案で終わっており、夕張市の破綻から何かを学びとって他の地方自治体の運営に生かすという姿勢は感じられなかった。
ただし、夕張限定の内容であるということは裏を返せばより具体的な分析や提案をしやすいとも言える。しかし残念ながら、そのどちらも物足りない印象を本書からは受ける。数字と年表を見れば原因(無謀な投資)と結果(財政赤字)はすぐにわかるが、そのような失敗がなぜ延々と継続されてきたのか、どうすればそれを防止できたのかについて提案なり批判がもっと欲しかった。
さらに言うと著者の記述がやや上から目線に感じられる点も気になる。「夕張市民の責任だ」というのは事実だとは思うが、負担金の増加や施設の閉鎖などで不自由を感じているであろう当事者から余計な反感を買わないか少々心配になる。本来なら夕張市民こそが本書の一番の読者になりうるはずなのだが。
あと、ところどころにある漢字の間違い・文の捩れ・意味の重複が気になる。

「夕張問題」 (祥伝社新書)
鷲田 小彌太
祥伝社
売り上げランキング: 206204