『「お金」崩壊』

マクドナルドで読み始めたらそのまま読み終えるまで止まらなくなった。(350円で何時間も居座る迷惑な客で申し訳ない。まあ席は空いてたから勘弁。)

当初は「個人でお金をどう運用するべきか」といった財テク系の本かと思って中をろくに見ずに買ったのだが、期待を大きく裏切られた。いい意味で(byモツ)。

金融や国債に代表される貨幣経済は永遠に膨張することを期待されているのに対し、資源やエネルギー、食料といった実体にはその総量や循環効率に限界がある。この数十年で貨幣経済実体経済に大きな乖離が起こっている。本書の主題は、実体経済に比べてアンバランスに肥大を続ける貨幣経済の危険性を訴えるということ。そのために中央銀行制の成立、戦費調達としての貯蓄・年金制度、金本位性から石油・ドル本位制の推移などについて多数の資料を引いて詳しく解説されている。
また、一方で実体経済の根本である資源の有限性についてもエネルギー・エントロピーの観点からきちんと触れられている。著者はエントロピー学会にも所属しているそうで、一読した限り、炭素循環やエネルギーについての記述に科学的におかしなところは見付からなかった*1
今の資本主義は自然の許容量が無限であることを前提としているが、その前提もそろそろ限界なんじゃないかと前々から漠然と考えていたが、本書ではそれをすっきりまとめてもらったという感じである。

(蛇足)かつて社会科嫌いの科学バカだった身としては、国家財政について書かれた初めの章はなじみの無い用語が多くて十分理解できなかった。しかしそれ以降の章は非常に興味深く読むことができた。理系の人は私と同じように前半を難しく感じるかもしれないが、よく分からなくても読み進めると良いと思う。

「お金」崩壊 (集英社新書 437A)
青木 秀和
集英社
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*1:強いて言えば、宇宙空間への熱の廃棄が赤外線を介していることに触れてほしかった