『「普通がいい」という病』

 とても深い内容を非常に分かりやすく説明している、まさにすご本。
 アマゾンの書評も、「人間の根源に迫る好著」「名著という他ない」「本当の自分を解き放す手がかりに満ちている」「感謝しきれない」などなど、絶賛ばかりだけど、さもありなん。(書名がいま一つこなれてないのが少し残念。)
 著者の専門である精神医学から哲学、文学、宗教まで動員して「人間」について深く深く考察されている。軸となるのは、人間というものを頭・心・体の関係という捉え方で、その3者のバランス(たいていは頭が強すぎる)を調整することで生きづらさや苦しさに向き合うことが提唱されている。
 宗教書や詩などからの引用が多く、また医学的・科学的な裏づけのある考え方ではないので、流し読みすると宗教的な匂いがするかも知れない。しかし、著者の提示する考え方は読者の頭(理性)ではなく、身体的な経験や感覚と見事に合致する。いわばすとんと腑に落ちて、腹の奥にしっかりと収まる。
 人生に窮屈さを感じている人はご一読を。特に、心に苦しみを抱えている人が比較的気分の良いとき*1に読むのが良いと思う。

 ちなみに本書には、「あなたの思いこみ、精神科医が治します」などといった不適切な文言の帯が付いているかも知れないけど、それは無視した方が良い。

 著者の泉谷医師はうつ病についてのウェブ連載もされている。これらの記事の基本になっているのも本書で紹介されている考え方なので、迷っている人はまず以下の記事を読んでみることをお薦めする。

*1:抑うつ症状の人は緩解期など