『物理のしくみ』

物理学者の小暮陽三氏とその長男で画家の小暮満寿雄氏との共著。実際には本文とイラストの大半を満寿雄氏が書いて、陽三氏は物理学の内容を監修しているようだ。ところどころに小暮家の思い出話なども挟まれていて、そこはかとなく手作り感の漂う本になっている。

正直言うと読み始める前はあまり期待してなかったが、思いのほかおもしろく読めた。満寿雄氏のマンガ(というかイラスト)は、失礼ながら今時のマンガとしては上手い絵では無い*1。しかし、物理の説明のイラストとしてはとても分かりやすい。ちょっと癖のある絵柄ではあるが、慣れるとむしろ味が出てくる。本屋で手に取る人は一瞥で判断せずにしばらくイラストを眺めてみて欲しい。

肝心の物理の内容では、量子力学の確率解釈の前に紛らわしい形でブラウン運動の説明があるところ*2だけが少し気になるが、全体的になかなか上手く解説されていると思う。
ただひとつ残念なのは参考文献や次に読むのに適した本の紹介が無いこと。本書で物理のとっかかりを掴んだ人が次に進むためにこれはぜひ欲しかった。

[マンガでわかる]物理のしくみ
小暮 陽三 小暮 満寿雄
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ちなみに小暮陽三氏にはもう一冊『物理のしくみ』という著書がある。こちらは私が高校生の時に教科書以外で初めて買った物理の本だった。田舎の本屋には物理の本などほとんど置かれてなくて、やっと見つけたこの本を暇さえあれば眺めていた。とても思い出深い本。

*1:この点は『ねこ耳少女の量子論』の対極

*2:ブラウン運動量子力学とは直接は関係が無い