『東大で教えた社会人学』

東大工学部の「社会人学」の講義をまとめたもの。
とかく浮世離れしがちな理系学生に対して、社会人になってから必要になる知識や考え方を伝えることを目的にしている。
内容に夢が無くて読んでいて気が滅入る箇所も多いが、学生と若手サラリーマン(特に理系学生と技術系サラリーマン)は読んでおいて損は無いと思う。
実を言うと本書には、国の借金や転職の現実など若い学生のやる気をくじきそうな厳しい現実もしっかりと書かれている。率直に言って読んでいて元気が出る本ではない。年配者(著者は団塊世代)の説教にしか思えない箇所も多いし、本当にそうだろうか?と疑問を感じる箇所もある。
しかしそれでも、本書に書かれている転職・住宅購入・相続・保険などは多くの人が将来直面する可能性が高い。そのいくつかは予期せず起こることがあるので、事が起こってから調べていては大きな損をすることもある。やはり大人として最低限の知識は持っておいた方が良いだろう。
あとがきにもあるように、かつてはこういった知識は親や親戚や上司などから暗黙知として伝えられてきたのだと思うが、核家族化やつきあいが疎遠になった現代では得る機会が減っている。本書はその穴をいくらかでも埋めてくれると思う。

東大で教えた社会人学 (文春文庫 (は28-4))
草間 俊介 畑村 洋太郎
文芸春秋 (2008/02/08)
売り上げランキング: 3513