『高校数学でわかるシュレディンガー方程式』

これはすごい。今年の自己ベストテン入り確実。

量子力学を勉強中の学生(大学3回生くらいか)には、(よほど優秀な人で無い限り)この本を副読本として読むことをぜひお勧めする。教科書を読み進めるための羅針盤としてきっと重宝するだろう。

本書はブルーバックス(新書サイズ)でありながら、驚くべきことに大学の学部レベルの量子力学をほとんどカバーしている*1。まかさシュレーディンガー方程式を数値計算で解く方法や摂動論の初歩まで説明されているとは思いもよらなかった。波動関数による量子力学の全体像を掴むという目的においてはそこいらの教科書よりも優れているように思う。
これだけの内容にかかわらず本書の価格は1000円を切っている。ホント、自分が学生のうちに読みたかった。

もちろんさすがに物理系の学生はこの本だけでは不足で、より本格的な教科書で学習する必要はある。教科書を読んでいて式の展開に追われて本来の物理的意味を見失ってしまったときには、本書を開いて自分が今何をしているのかを確認するといい。

このように、本書は非常に分かりやすく書かれてはいるが見た目以上に本格派である。「物理のお話」で終わるのではなく、易しいとはいえ数式を使ってきちんと説明がなされているため、力学の初歩と微分を知らないと理解するのは難しいかもしれない。だがそれゆえに、物理好きの高校生ややる気のある大学1-2回生にとっては類書にはない歯ごたえを与えてくれると思う。
ぶっちゃけ、この本をきちんと理解すれば、物理系学科の大学卒業程度の量子力学の知識は得られると思う*2

*1:足りないのは調和振動子くらいではないだろうか

*2:逆に言うと物理系の卒業生でも本書の内容を十分に理解しているかどうかは疑わしい。