『素数ゼミの謎』

素数を研究する研究室のゼミナールで起こった謎の事件*1…ではなく、アメリカ大陸に生息する13年ゼミと17年ゼミの進化の物語。
13年とか17年とかいうのはそれらのセミが幼虫として土中で過ごす年数のこと。このセミたちは数年おきに局地的に大発生するという特徴をもつ。最近では2004年に大発生してニュースにもなった。13と17が素数であることから本書ではこれらのセミを「素数ゼミ」と呼んでいる。
素数ゼミの生態には「なぜこんなに長い年月をかけて成虫になるのか?」「なぜこんなにいっぺんに同じ場所で大発生するのか」「なぜ13年と17年なのか」といった不思議な点がある。本書ではこの3つの謎を子供にもわかるように明快に解いてゆく。

内容がやさしいにも関わらず、自然界の謎を初等数学を使って推理してゆく醍醐味が味わえる優れた「科学の本」。字も大き目で挿絵も多いので、小学生の高学年にもなれば一人で読めると思う。

本書は著者の研究テーマを書きおろしたものらしいが、このように自分の研究を一般向けに分かりやすく説明できるのは少しうらやましい。私のやっていたレーザー分光とか非線形光学を本書ほど平易に説明するのは非常に難しく、これまで誰かに興味を持ってもらえたためしがない*2

素数ゼミの謎
素数ゼミの謎
posted with amazlet at 09.06.04
吉村 仁
文芸春秋
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*1:そんな感じの本だと思い込んでいた

*2:単に私の説明が下手なだけ?