『走査トンネル顕微鏡技術』

 走査トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunnel Microsopy)を使う人に最適の入門書がやっと出た。大学の四年生・修士課程の学生が最初に読む本として超オススメ。
 これまでに出版されている日本語のSTMの本というと、専門家向けに近年の研究成果をまとめたものや、応用的な実験や手法を解説しているものが多く、基礎知識の説明にページを割いた本は少なかった。また、本の価格についても高めのことが多く(6000円とか9000円とか)、初心者や学生には薦めにくかった。
 その点、本書は学生を読者に想定して書かれており、初心者向向けの情報が他所より充実している。しかも低価格でコンパクト。さらに文章も読みやすい。

 本書が入門書として優れている点

  1. 低価格(薄い本なので一見割高だけどこの内容でこの価格は超お買い得)
  2. STMのデータの物理的意味が具体的に説明されている
  3. 最近の情報が研究グループの名前入りで記載されている
  4. 除震技術の方法のような実験に役立つ知識が記述されている
  5. STMの歴史の記述が秀逸
  6. 文章が読みやすくわかり易い

 大学や大学院でSTMを使う人はぜひご一読を。きっと自分の実験に対する視界が広がる。