巣から落ちたツバメの雛

 帰宅したときに門の屋根のツバメの巣から雛が落ちているのを見つけた。今年のツバメは卵をえらく遅い時期に産んだそうで、8月に入った今でも産毛の残った雛が巣でかまびすしく鳴いている。
 落っこちた雛はまだ飛ぶことはできない様子だったが、もしかすると飛ぶ練習を始めた可能性もあったので、しばらくそのまま様子を見ることにした。(帰宅時はこちらも熱中症寸前で構う元気も無かった)
 昼食をとって昼寝をしてからまた門のところに行くと、落ちた雛は相変わらず地面にいた。じっとうずくまっているかと思えば、時々羽ばたいてみたりちまちま歩いたりしているので大きな怪我はなさそうだ。
 ときおり羽をばたばたさせて飛ぼうとしているようだが、飛び上がれてもせいぜい10数センチで、自力で巣に戻るのはおよそ無理そうだ。放っておいたら猫かカラスに襲われるか、親鳥に見捨てられる可能性が高かったのでどうにか保護することにした。
 まず、菓子の木箱に雛を追い込んで巣に戻そうとしてみた。もともと歩くのが苦手なツバメ、しかも雛なので捕まえるのはたやすい。しかし、巣の高さまで持ち上げる途中で雛は箱から飛び出してまた地面に落ちてしまった。落ちて仰向けにひっくり返ったのでヒヤリとしたが、幸い大きな怪我はしなかったようだ。
 無理に巣に戻すと危なっかしいので、親鳥が餌を運んでくれることに期待してみた。もう一度雛を木箱に入れて、巣から見える場所に置いて見た(雛はおびえているのか木箱の中でじっとしていた)。物陰に隠れてしばらく観察したが、あいにく餌探しから戻ってきた親鳥が箱の中の雛にえさを運ぶ様子はない。そうこうしているうちに雛がまた木箱から転げ出てしまった。
 これはどうも難しそうだということで、母親と相談してやはりなんとか巣に戻すことにした。
 まずカッターナイフや釘を使って木箱を小さく改造した。これで雛が逃げ出さないように手で覆える。小さくした木箱にもう一度雛を追い込もうとしたが、雛はじっとうずくまってうまく入ってくれない。指でつついてみると、じりじりと歩いて門扉の隅っこにどんどん逃げていってしまう。
 このままだとコンクリートで雛の体が冷えてしまいそうだったので、やむを得ず手でつかんで巣に戻すことにした。隅っこに逃げ込んだ雛をどうにかつまみ出して小箱に入れ、飛び出さないように手で覆いながら脚立に登ってどうにか巣に押し込んだ。 巣にいた他の3羽の雛は首を引っ込めていたので邪魔にはならなかった。押し込まれた雛はショックで硬直しているのか、巣に頭を突っ込む姿勢で巣に泊まってじっとしていた。
 その後しばらく暑い中様子を見ていたが、戻した雛は最初は動きも鈍く、他の雛に隅っこに押しやられていたが、やがて他と見分けがつかないくらいに元気を取り戻した。多分これで大丈夫だろう。
 今回はおっかなびっくり戻そうとして余計に雛に負担をかけたかも知れない。次からはさっさと手でもどした方がよさそうだ。できれば雑菌をつけないように手袋を使って。