葬儀はどうにか終えたものの、心身の疲れを取るために1日有給を取った。それに、病院に見舞いに行っていた頃からしばらく分の家事も溜まっていた。

 なのについうっかり上司からのメールを見てしまった。返す返すも失敗だった。
 悼みの言葉か事務連絡だろうかと思ったら、葬儀で休んでいた間に部品の製造業者から連絡があったのにすぐに返事ができなくて会社の体面を損ねたとか、上司自身がその応対でいかに迷惑したかとか、その事に対してまだ謝罪が無いのが許せないとか、およそ信じがたい内容だった。

 …絶句した。めまいがした。

 この2日間、日中は諸々の準備や通夜や葬式で手が離せなかったし、通夜の夜は祖母の亡骸と一緒に施設に泊まった。それらの合間にスマホでメールを確認しなかったのがそんなに悪かったと言うのだろうか。
 部品製造業者からの確認と言うのも1日2日を争うようなものでは全くない。むしろ支払いの都合で普通より遅く納品してもらうことになっている。
 そもそもこの件は別の業者に依頼した基本設計をそのまま製造に出しているもので、今回のような技術内容の確認は設計した業者に任せてある。念のために、業者間のメールのやり取りも同報してもらっているに過ぎない。
 ぶっちゃけ私が居なくても回るようになっているし、設計した業者さんも、私の確認を待たなくても支障は無いのでは?と言ってくれている。
 
 それを、同報メールが上司にも来たからと横から明日返事しますと回答し、その一方で自分は発注について何も聞いてないのに対応させられて大変だったとか、何を考えているのか全くわからない。
 発注について聞いてないというのも全く嘘である。嘘でないなら脳の記憶機能が壊れているのだろう。今回の発注は上司の指示によるもので、自分は単に発注書を書いただけだ。また、その後の業者との連絡は逐一報告しているし、メールは上司にも同報してもらっている。
 この期におよんで「何も聞いてない」とは、嘘にせよ忘れているにせよ、正気を疑わざるを得ない。


 普段ならいざ知らず、祖母を亡くして少なからず気落ちし、面倒を見ていた母親に葬儀の疲れが出ないだろうかと心配してところに、このような陰湿な悪意を受け、正直吐き気がした。