朝礼とミーティング。
 去年の後半から外部と共同で開発していた装置は、先月末に書類の上では開発が完了した。が、実際に関わった身としては開発の目的が十分達成できたと言うのはちとはばかられる。目的である性能の向上の度合いがいまいちはっきりしないことと、その仕組みを維持するのに手間がかかることが気になる。言わば、ある方向へ改良したことによって安定性とメンテナンス性が低下した。今の時点では商品化できるとはとても言えない、というのが実験の担当者と自分の二人の見解だった。
 のだけど、上司は早く商品化しろ、カタログを作れとやたらと急かす。もちろん商品化を目指して開発をしているはず(この会社の実態はそうとも言えないが)なので急げと言うのは分かる。けど、今は研究・開発レベルでの効果に疑問符がついている状態だ。この状態で先走って箱やら宣材やらを作っても、後から商品化は無理ということなったらそれらのコストは全くの無駄になる。
 そもそも研究・開発の段階で目鼻のついていないのに先走って自社で試作品を作るということからして順番が間違っている。特に今回の案件は市販の機材を組み合わせれればほとんどの検証実験をやれた。わざわざ自社で試作品を作らなくても技術を詰めることは出来た。と言うか、実績のない試作回路を使うより市販品を使う方が実験の信頼性は当然高い。つくづくこの会社のやり方は理解に苦しむ。
 とかいろいろ思うことはあるが、言うだけ無駄なので、上司には現時点で商品化に難点があることを念押しした上で、無駄になるのを覚悟しつつケースとカタログの制作を進めることにした。
 …なのだけど後で業者のことを上司に聞きに行ったら、別に本当にケースを作らなくても完成形がわかる画像でも良いとか言われてしまった。…どっちやねん…。