理系進路を勧める詐欺

大学や若い研究者の現状を知るほどに陰鬱な気分になる。その一方で相変わらず、中高生の理系離れを防げ!と声高に叫ぶ人達がいる。しかし彼らは一体何を目指しているのだろうか?国民全体の科学リテラシーを上げるため、というのであれば異論は無い。環境問題やエネルギー問題など生活に密接に関係する社会問題を考えるのに科学的なものの見方は必要だろう。*1
しかしどうも今の理科離れ対策には「科学技術立国*2」という言葉が常に見え隠れしている。もし本当の目的が「科学技術立国」であるなら、果たして理系を志望する中高生を増やしただけで十分なのだろうか?
この辺の事情は、技術者を頭数でしか考えられない日本の悪習が影響しているように思えてならない。理系進学者が減ったなら、そのぶん一人あたりにかける指導時間や金銭援助を手厚くして人材の質を高めるという方針をとっても良いのではないだろうか。実際インドなどはその方針で成果を上げている。
非常に辛らつに言えば、今の日本の方策は、理系に進学する人数を増やすために中高生をだますことに熱中しているだけではないのか。この流れにのって理系に進学した学生たちは後になって後悔しないだろうか。

*1:単なる科学知識では不十分。この手の社会問題はリスクや経済性も含めてこれからどうすべきかを「考える」もしくは提出されている意見を「判断する」能力が必要。これは言うほど簡単なことではないけど。

*2:こういう空々しい言葉には嫌悪感を感じる