『サバがトロより高くなる日』

とても面白かった。今年のベスト5入りは確実だろう。魚好きを自認する人は何をさしおいても読んでいただきたい。というか読みなさい(ある意味義務)。

つい先ごろミナミマグロの漁獲量の制限がニュースになった。
ミナミマグロ絶滅危惧種なのだそうだ。ところが周りを見れば回転寿司の店がそこかしこに開店している。これは一体どういうことなのか?やはり鯨の時と同じように、欧米の過剰反応または嫌がらせなのか?マグロの規制のことを聞いてこんなふうに感じた人も多かったんじゃなかろうか。
たしかに回遊する海洋生物の数や生態を正確に調べることは難しい。しかし本書を一読すれば「正確にわからないから今までどおりでいいんだ。」と簡単には言えないはずだ。本書のデータを信用するなら、ほとんどのメジャーな海産物はここ30年ほどの間に激減している。一部のものは品薄や値上がりでそれを感じられるが、マグロやサバのように減っていることを実感できないものも多い。マグロやウナギなどは回転寿司やコンビニ弁当などにも利用されるようになっているし、むしろ値下がりしているようにも感じられる。
タネを明かせばマグロは品種や漁場を変えることで漁獲量を確保してきた。サバについても輸入を増やすことで需要を満たしている。また、見た目や触感が似た全く別の魚を代用品にしている場合もある。かつて「白身魚」の多くはタラだったが、今では名前を聞いたことも無い南極海の深海魚やアフリカの淡水魚だったりする。
これは、裏を返せばかつての漁場ではもはや捕れなくなったことを意味する。漁業はいまや持続可能な産業ではない。

そういえば実家にいた頃、母親が「イワシが高くなった」とよく言っていた。本書にはイワシについては述べられていないが、ともするとイワシやサバが高級魚になる日が来るのかもしれない。あなたの好きな魚料理を子供や孫が食べられなくなるのは悲しい事ではありませんか?

しかし,こういう大事な事こそテレビなどで報道するべきだろうに…。