『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』

 本書の主題である「残酷な世界を生き延びる成功哲学」は、まえがきにある通り、次の二つの要素に集約されている。

  • 伽藍を捨ててバザールに向かえ
  • 恐竜の尻尾のなかに頭を探せ

 ここで言う「伽藍」「バザール」とは、Linux界隈でお馴染みの、エリック・レイモンドの言う「伽藍とバザール」のこと。伽藍に閉じこもるのではなくバザールに繰り出して「評判」を通貨にする世界に身を置けという意味。
 もう一方の「恐竜の尻尾」は、クリス・アンダーソンの言う「ロングテール」のこと。「頭を探せ」とは、恐竜の尻尾にはフラクタルのようにたくさんの小さな恐竜が繰り込まれているので、自分が「恐竜の頭」になれるような小さな分野を見つけられるという意味。
 ある意味、以上で本書の内容は言い尽くされてしまうのだけど、これらの二つがなぜ現代で幸福に生きることにつながるのかを、進化論や社会科学や動物行動学などを根拠に挙げて解説しているのが本書のユニークな点だろう。