『なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか』

会社や上司がアホに見えた時に読むべき一冊。コンセプトが東京ー大阪間の新幹線で読める軽いビジネス書ということで、実際それくらいの時間で読めた。
本書が俎上に上げるのは「アホな上司」だけではなく、不祥事を起こす組織にまで及ぶ。
数年前から毎日のようにニュースになる建築や賞味期限の偽装、原発などの事故隠しが起こる理由が、経済学の「エージェンシー理論」「取り引きコスト理論」「所有権理論」を使って解説されている。これらの事例に共通しているのは「局所合理性」であり、これが本書のキーワードでもある。局所合理性とは、外部から見ると愚かに見える組織や個人の行動が、当事者(局所)にとっては理にかなった行動であるということである。

実のところ本書にはダメな組織・上司の分析はなされていても、具体的な対処行動についてはほとんど触れられていない。私も読んでいてそれが不満だったのだが、最後にその理由を読んで納得がいった。

理不尽な上司に悩まされている多くの人たちの悩みの究極的な原因は、最終的にはそのような上司の行動が十分理解できない点に求められるように思います。

著者は「理解に苦しむ」ことが「怒り」「憎しみ」「軽蔑」と言った感情を引き起こし、ストレスを増やしたり、酒の上の愚痴などで不毛に発散するのは損だと言う。
つまり、本書は、アホな上司に怒ったり苦しんだりせずに、適当にいなすために相手の心理を読む洞察術を解説した本だということだ。相手の動きを読んだ上で、こちらからどんな技を繰り出すかは自分で考えよう。

なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか (扶桑社新書 16)
菊澤 研宗
扶桑社 (2007/08/30)
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