『分子性ナノ構造物理学』

 朝倉書店の現代物理学の「展開シリーズ」の一冊。比較的最近の分子、特に有機分子の物性研究についてまとめられている。雰囲気的にはゴリゴリの物理というよりは化学寄りだと思う。

分子性ナノ構造物理学 (現代物理学展開シリーズ)
豊田 直樹 谷垣 勝己
朝倉書店
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 以下は目次

  1. 序論:歴史的概観
    1. 分子磁石
    2. 有機導体
      1. キャリア添加の源流
      2. 準1次元金属TTF−TCNQの登場と電化密度波の発見
      3. 準1次元金属における超伝導の発見とスピン密度波
      4. 高次元化:準2次元BEDT−TTFから3次元Ni(tmdt)2
    3. 新しい炭素系物質:フラーレンナノチューブ
    4. 種々のネットワーク構造・多孔性物質の開発
    5. 室温超伝導への夢
  1. 基礎的概念
    1. 構造ブロック
    2. 分子軌道とフロンティア軌道理論
    3. 電荷移動
    4. 結晶中でのバンド形成と強束縛近似
  1. 低次元有機導体
    1. 分子軌道と結晶構造
      1. 分子軌道
      2. 結晶構造
    2. フェルミ
    3. 電子物性
      1. 電気伝導と光学的性質
      2. 熱的・磁気的性質
    4. 電荷やスピンの自由度による不安定性
      1. 電荷密度波とスピン密度波
      2. スピン・パイエルス転移
      3. スピン液体
    5. 多体相互作用
      1. フェルミ液体
      2. ハバードモデル電荷秩序、モット転移
  2. ;温度・圧力相図
  1. 有機超伝導
    1. はじめに
    2. ギンツブルグ−ランダウ理論
    3. 超伝導転移
      1. 異方性とゆらぎ
      2. 圧力依存性
      3. 構造の乱れ
    4. 超伝導パラメータ
      1. (TMTSF)2X
      2. (BEDT-TTF)2X
    5. 強磁場下での超伝導:ジャッカリーノ−ピーター効果
    6. 超伝導秩序の対称性
      1. クーパー対の対称性
      2. 対称性による対状態の分類
      3. κ-(BEDT-TTF)2X塩でのクーパー対状態
      4. (TMTSF)2X 塩のクーパー対状態
    7. 対形成機構と相互作用
      1. フォノンの役割
      2. 非s波対形成の関する相互作用モデル
      3. 対形成機構に対する実験からのヒント
      4. ユニバーサルな関係式
  1. ナノ結晶・クラスタ・微粒子
    1. ナノ物質の構造と物性:総論
      1. ナノ物質の構造
      2. ナノ物質の変遷
    2. ナノ物質の物性:基本的理解
      1. 階層構造と物性
      2. 内部空間
    3. クラスタ・微粒子・ナノ結晶:各論
      1. Si、Ge、Sn系ナノ多面体物質
      2. III族ナノ構造物質
      3. 炭素系ナノ多面体物質:フラーレン
    4. ナノ構造物質の伝導と超伝導
  1. ナノチューブ
    1. ナノチューブの合成と構造決定
    2. 半導体エレクトロニクスとカーボンナノチューブ
    3. CNTの電子物性
    4. ナノチューブの電子デバイスへの道
    5. CNTにおける量子伝導とスピン偏極
    6. ナノチューブの総括
  1. ナノ磁性物質
    1. 伝導と磁性
    2. 電気伝導物質と磁性体の概観
    3. 分子磁性体
    4. 単分子磁石
    5. スピン流:新しいスピン角運動量の概念
    6. ナノ磁性物質の最近の話題
  1. ナノ物質機能の電子デバイスへの応用
    1. 物質の機能
    2. ナノ構造が活用される種々のデバイス
      1. 発光素子
      2. 分子半導体トランジスタ
      3. 電荷結合素子
      4. 太陽電池
      5. プリンタ感光体
      6. 高密度磁気記録素子
      7. ホトケミカルホールバーニング
    3. 次世代デバイス
      1. 分子デバイス
      2. 人工超格子と物性
    4. 次世代デバイスの最後に