『超伝導でたどるメゾスコピックの世界』

 数式が全く出てこないにもかかわらず、非常に分かりやすい解説に驚いた。文章と図だけでも科学をここまで上手く説明できることが分かる。サイエンスライティングの良いお手本だと思う(少しくらい数式を使えばもっと楽に解説できそうな箇所もあるが)。
 本書は、超伝導のことは学習したが良く分からなかったという人にお勧め*1
 また、超伝導のことを知りたいが簡単すぎる解説では物足りないという人にも良い。数式を使わない科学の解説にはお金や人間行動になぞらえて物理現象を説明しようとしているものが多いが、かえって誤解を助長しそうなものが多い。その点本書にはそういった無理のある例えは殆ど無いので、高校程度の物理学の知識がある人にはむしろ分かりやすいのではないかと思う。

 本書は雑誌『イリューム』に連載された超伝導メゾスコピックの解説を集めたもの。超伝導とは低温状態で金属などの電気抵抗がゼロになる現象のこと。また、「メゾスコピック」とはミクロとマクロの中間の大きさを意味する。具体的にはおおよそ100ナノメートルから10マイクロメートル程度の大きさを指す。

*1:私もクーパー対が何故できるのか分からなくてつまづいた。