技術者の処遇

だから技術者は報われない(2ページ目) | 日経 xTECH(クロステック)

 「ものづくりは実に面白い。その面白いことを毎日できるわけだから、技術者の給料は安くてもいいのです。それで十分幸せなんですから」

 やはりそういう考えだったのかと、ある意味納得した。

いわゆる「理系離れ」を阻止する目的で、「小中学生を対象とした科学の面白さを体験するイベントを開こう」などと言い出す学者さんや経営者の方がおられるが、その発想も根っこは同じだろう。つまり、それが面白いことであれば、どんなに待遇は悪くても人はそれをやってくれるのだと信じているのである。

「お願いだから、理系の人間はカネも要らずに趣味だけやってると思われるようなアピールをしないでくれよ」という書き込みもあった。

 「そんな仕打ちを受けても黙って会社にとどまっているのが悪いのだ。すぐに会社を辞めなさい」と、中村氏なら言いそうである。残念ながら彼の場合は、東京から離れられないという家庭の事情があり、「地方の大学なら行き先もあった」らしいが、それもかなわなかった。

最近、ある大学教授から聞いた話である。「よく国のプロジェクトや企業との共同研究を提案するんだけど、そのとき必ず聞かれることがあるんですよ。それは、『類似研究はあるか』ということ。米国では、このとき『ある』と答えたら提案は通らない。すでに他でやってることなら、うちでやる必要はないというわけです。けれど、日本では必ず『ある』と答えなければダメ。相手が国でも企業でも、『類似研究は盛ん』と言わないとテーマとして認めてもらえない。その風潮は、今でもあまり変わらない」