『他人を見下す若者たち』

仮想的有能感」をキーワードに若者の心理を分析している。よりくだけた言いかたをすれば現代日本人の「自信」のありようについて述べている。オーソドックスな心理学の本で、著者の主張も概ね同意できる。ただし、瑣末な箇所では同意しかねる部分もある。本筋からは外れるが、P80で「親の問題行動」として

  1. 「学校の授業には期待しない。勉強は家庭で面倒を見る」と言う発言
  2. 「担任がハズレ」発言
  3. 家族旅行で学校を欠席させる

などを挙げている。私にはどれもたいした問題だとは思えない。1,3については自己責任であろうし、2については実際ハズレの教師は存在していて、公立校では教師を選ぶことはできないのだから。*1
本書からは全体的に掘り下げが足りない印象を受けた。例えば世代間の意識の差は年齢によるものか経験してきた社会環境によるものかは長年の調査が必要であるが、これは未だなされていない。このことについては著者自信が「おわりに」で述べている。そういう意味では途中経過の報告または速報という意味合いが強い本と言えるだろう。
それほど特徴のある本には思えないのだが、あちこちの書店で平積みされているのを見かけるのはなぜだろう。

*1:もっとも、「旅行のために欠席させるから、ウチの子だけ補習してくれ」とか言うのはどうかと思うけど。