『プリオン説はほんとうか?』

読了。いやあ難しかった。本書はプリオン説(異常プリオンがBSEの病原体であるとする説)を批判的に検証することを目的にしている。プリオン説の入門書、解説書としても読めるが一般向けでは無い。少なくとも分子生物学の基礎知識くらいは無いと読めないだろう。私は大学のときにほんのわずかだが分子生物学をかじっていたので粗筋は掴めたつもりだが、十分に理解できたとはとても言えない。この本、よく行く普通の書店で平積みになっているが理解できるお客さんはどれほどいるのだろうか?牛肉の輸入再開について考えたい人は、同じ著者が書かれた『もう牛を食べても安心か』などをどうぞ。(私は未読ですが)ただし、著者の意見は現時点では「異説」であることは忘れないように。(そんな異説など読みたくない!という人は『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』をどうぞ)
本書は難解であるが、門外漢が読んでも無意味かといえばそんなことは無い。細かい内容が分からなくても科学を勉強している人なら一読の価値はある。
本書の目的は、既にノーベル賞を受賞しているプリオン説に真向から異義を唱えることなのだ。当然、それなりの反論を提示しなければならない。そのため本書の後半ではプリオン説に対する批判が展開されているのだが、これが非常に刺激的なのだ。これまでに発表された論文を論理的に検討しなおす過程は、科学的、論理的な思考法の見本としてとても参考になる。世の中に論理的思考法の本は数あるが科学をネタにしているものは殆ど無い。本書は科学論文をクリティカルに読む方法を学べる数少ない本である。