『メイドロボットはどこから生物となるか』

 タイトルと表紙&裏表紙がアレなのでレジに持っていくには抵抗があるかも知れないけど、内容は至極まっとうな分子生物学の解説書になっている。
 著者の夏緑さんは、大学院で生物学を専攻し、今は科学解説書だけでなく小説(『BH86』『イマジナル・ディスク』など)やマンガ原作(『獣医ドリトル』など)も手がけている現役の作家。さすがに本職だけあって小説の部分もなかなかの出来。ライトノベル仕立ての科学本は最近増えつつあるけど、それらの中でも本書のクオリティはかなり高い。ラストのしかけに、分子生物学的な要素を絡ませるあたりも実にソツがない。
 一般向けの科学の本として見た場合、本書のレベルは平均よりやや高めだと思う。しかし、文章がかなりわかりやすく書かれているので分子生物学に馴染みの無い人でも読むのはさほど苦にならないと思う。一方で、最近の話題もちりばめられているので、分子生物学の基礎知識のある人でも退屈せずに読めるのではないかと思う。
 ただひとつ残念なことに、解説のための図が少ないのでDNAや細胞の振る舞いを具体的にイメージしづらい。その辺については参考文献に挙げられている『生命のセントラルドグマ』や『DNA複製の謎に迫る』、『ゲノムサイエンス』(いずれも講談社ブルーバックス)などを併せて読む(もしくは図だけ見るとか)と良いと思う。

メイドロボットはどこから生物となるか
夏 緑
オーム社
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おすすめ度の平均: 3.5
3 タイトルがちょっと紛らわしい
4 メイドロボ関係ないやん

生命のセントラルドグマ (ブルーバックス)
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