『オサキ江戸へ』

 狐のような妖怪「オサキ」とそれを使役する「オサキモチ」である周吉が江戸本所深川での怪事件を解決する妖怪時代劇ミステリー。
 人間離れした能力を持ちながらもちょっとぼんやり者の周吉と、その周吉を懐の中からからかうオサキの掛け合いを基本にストーリーが進むが、刃傷沙汰やら猟奇殺人やらいささか剣呑な場面も出てくるので、「しゃばけ」よりちょっとだけホラー色は強め。
 著者は本作が小説家としてのデビュー作だとか。「お約束」の見せ方が古かったり、やや説明がくどい部分もあるが、回想の入れ方などはなかなか上手いと思う。
 ちなみに「オサキ」なる妖怪、聞いたことがなかったので著者の創作かと思ったら、ちゃんと伝承にあるようだ。関東周辺の妖怪らしい。でも江戸には入れないという説も。
 なんとなく地獄先生ぬ〜べ〜のいずなが使う「クダギツネ」に雰囲気が似ていると思ったら、クダも中部から関東地方で狐憑きの原因と言われる妖怪らしい。オサキは関東の一部でクダはそれ以外の地域というように生息(?)地域が分かれているようだ。とすると、呼び方が異なるだけで実は同類の妖怪なのかも。
オサキ - Wikipedia

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