科学研究分野の事業仕分けについての感想

 仕分けの最中に民主党に送られた文章ということだけど、自分とほとんど同じ意見が上手くまとめられているエントリがあった。
緊急メッセージ、未来の科学ために - 科学・政策と社会ニュースクリップ

まずはじめに、仕分け作業を私たち市民に開放し、リアルタイムで見ることができるようになったことを、高く評価いたします。

 仕分けの進め方や結果に不満を持つ人も多いだろうけど、初めてのことだからそこは少し大目に見るべきだと思う。やり方は徐々に改善していけば良い。文句を言いすぎて以前のやり方に戻るのだけは避けて欲しい。

科学技術予算に関しても、特定研究者に集中した非効率な予算配分、使われない実験機器が購入されるという無駄使いといった、様々な問題点が指摘されてきました。今回の事業棚卸しにて、このような非効率な予算の配分を見直すべきであるという意見が出たのはまっとうなことであると考えます。

 科学研究はミズモノというかまぐれの要素も多いので、特定の研究者がいつでも良いアウトプットをできるとは限らない(むしろ大きな成果を出した研究者ほど次のヒットを飛ばす確率は低いかも)。成功の目処のついた研究には別枠で予算を組んで、芽が出る前の研究には広く薄く予算を配分して欲しい。
 広く薄い予算配分は人材育成のためにも重要で、優秀な学生が、予算獲得が下手な教授の下についたせいで能力を発揮できずに潰れてしまうのをある程度回避できるようにして欲しい。(もしくは能力の低い教授を減らす仕組みを!)

また、たとえすぐには利益をもたらさない研究予算であっても、その効果に対して厳しい目が向けられるのも当然です。国民の税金を使う以上、どのような成果がもたらされたのかを測り、分かりやすい言葉で説明することは不可欠なことです。

研究費が税金であることを忘れ、研究費を他の手段で得る努力が足りなかったと言えるでしょう。

国民の目線で科学を語ることを忘れ、国民の声を聞くことなく、狭い業界内でのみ通じる言葉で語ってきた科学者は、大いに反省すべきでしょう。

 すぐにお金にならない研究ほど国民の理解を得るために説明の努力が必要だろう。もちろん国民の側ももっと利口になる必要がある。そこでサイエンスライターやサイエンスコミュニケーターの出番ですよ。
 もっとも、大学のサイエンスライター養成講座の類は、研究者のための論文書き講座か、自分たちの息のかかったライターを作ろうとしているように見えなくもないが…。

研究者たちは、今回の仕分け作業の結果を、短期的な利益がもたらされない純粋基礎科学研究は不要である、若手研究者に対する支援はいらない、というメッセージと受け取りました。もはや我が国では科学研究をすることが許されていないと考え、深く失望しています。

こうしたことが、日本の科学技術の将来に取り返しのつかない影響を与えたのではないかと危惧しています。

 人間は取り返しの付かない影響が出るまで反省するのが難しい。研究の当事者でない役所や政治家はもとより、現場でふんぞり返っているボス研究者もまた然り。若手の人材枯渇で研究現場に何が起こるかを一度経験するのもいい薬になるように思う。たとえ薬が効きすぎて重篤な状態に陥ったとしても。(薬害を受けるのが若手ばかりだと言うのが最大の問題だけど)