『孫は祖父より1億円損をする』

 世代会計で見た日本の高齢化問題。学者と記者、二人の著者が章ごとに分担して書いている。
 はじめに、の

 「ワシじゃ、ワシ、お前の祖父じゃ、お前のために道路や福祉を充実させたのだが、予想外にカネがかかってのう。だから頼む!」

には、本当は笑えないのに思わず笑ってしまった。本書の主張はこれに尽きるかも。
 第2章から第5章では学者による世代会計の説明とそれによる日本の現状分析が展開されているが、正直なところいまいちピンとこなかった。計算式を正確に書くとかなりややこしくなるのだろうけど、計算式で使われる因子くらいは示しておいて欲しかった気がする。あと、他国との数値比較などはできるだけ表にまとめて欲しかった。全体的に、ちょっと整理が足りない印象を受けた。
 ちなみに学者である著者は「世代会計は(世代間闘争を起こすことなく)冷静に話し合うためのツール」と主張しているのに、記者である著者はしきりに「高齢者による搾取」といった表現を使っている。こういった意見の相違はあえて調整しなかったと本書のあとがきにあるが、やはりちぐはぐな印象は受けた。

 ちょっと重箱の隅つつき。記者である著者による第6章に「不効率」という言葉が出てくるけど、こんな言葉あるのだろうか?