大学教員の再雇用

大学と既得権 - Joe's Labo

 一橋大の齊藤誠先生がとても素晴らしいコラムを書いておられる。なんでも一橋大学教員の再雇用制度による定年延長について、氏は一人で「再雇用制度断固反対」のビラをたててハンストまでやったらしい。氏が、自らも関係するであろう教員の再雇用制度の導入に反対した理由はこうだ。

しかし、国からの交付金が年々減らされている国立大学法人にあって、高齢教員を大学組織に残すという決定は、若い研究者の雇用を抑制することに即座につながる。 (中略)
研究の第一線に残ることが難しい60代の研究者が国立大学に本当に必要なのか真剣に考えるべきだろう。

氏は同様に、GMや日本航空を例に出し、ベテランへの厚遇は若い人間から機会を奪い、組織を活力を削ぐことにつながると説く。

 まったくもってその通り。民間企業以上に若年の就職が難しい日本の大学ではなおさら。
 それにしても定年間近の教授でこういうことを言う人はいないのだろうか(コラムの筆者の齊藤誠氏は、経歴から見て40代後半くらいと思われる。)。「今のような時代だからこそ早めに後進に道を譲ろう」と言える教授なら素直に"先生"とお呼びできるだけどなあ…。

 某国立大では、ベテラン教授のポストを守るために、学内で実施したアンケート調査を参考にしたという。各学部に「何歳くらいが一番良い研究をしているか」というアンケートを自分達に行い、「50歳以降」という回答がもっとも多かったのだそうだ。
 こういうのを本当のお手盛りというのだろう。

 がっかりな結果ではあるけど、アンケート項目が不適切だったという可能性も無くは無い。
 理系の研究室の場合、50歳くらいで教授になるまでは、自分の納得のいく研究が出来ないと聞いたことがある。日本の大学では若手研究者の独自性があまり認められていない*1ため、助手や助教の間は自分で研究テーマを選ばせてもらえず、教授から与えられたテーマをやることが多いのだそうだ。
 押し付けられたテーマよりも自分のやりたいテーマの方が「良い研究」だと思いたいのが人情だろうから、「50歳以降」という回答の中には「教授にならないと意味のある研究なんかできねーよ」という心情も含まれていた…のかも知れない。
 もしそのアンケートで、「権限や予算などの条件が同じと仮定して、純粋に"個人の知的能力"がもっとも高くなるのはどの年代か?」という質問をしたなら、30代や40代と答える人がもう少し多かったかも知れない。

*1:もしくは一人前の研究者を育成するシステムが無いため