『光るクラゲがノーベル賞をとった理由』

 これは…めちゃくちゃ面白かった!
 GFPと生物発光とノーベル賞受賞研究の経緯が見事にまとめられている。この内容でこれほど分かりやすく書けるとは、サイエンスライティングとしてレベルは相当に高いと思う。
 特に白眉は第2部で、三人の受賞者がどうしてGFPに注目したのか、どのように工夫して研究を進めてきたのかが丁寧に描かれているのが素晴らしい。これでこそ「科学」が単なる結果の羅列ではなく、未知の物事に対するプロセスであることが分かると言うもの。

 本書ほど分かりやすい解説なら中学生でもなんとか読めるように思う。とは言えさすがに内容を全部理解するのは無理だろう。(そもそも理工系の大学院卒者でも、生化学が専門でなければちゃんと理解できるかどうか疑わしい。)なので細かいところはあまり気にせずに分かるところだけ味わうと良いと思う。

 欲を言えば、もう少し詳しく知りたくなった中高生は一般の人のためのブックガイドも載せておいて欲しかった。参考になりそうな本を勝手に挙げるなら、光化学、タンパク質、遺伝子の発現などでそれぞれ参考になりそうなのは(手軽な新書では)

あたりかな。他にも何冊かありそうだけど思い出せない。

 ところで、驚いたことに本書は大学院生を中心に複数の若手の研究者が2ヶ月ほどで書き上げたらしい。大学院生でこれだけ見事に科学を書ける人達がいるとは…。脱帽。