非線形光学と密度行列

 大学院レベルの量子論の概説書である『ザイマン 現代量子論の基礎』の新装版が出ていた。大学院で苦労した、密度行列とその時間発展をグリーン関数で扱う方法をちゃんと理解しておきたくて購入した。
 非線形光学の分野では光と交互作用する物質系を記述するのに密度行列が使われる。その手法は大学院に入ってすぐに研究室の全体ゼミで教わったことがあるが、そのときは全く理解できなかった。
 教材は教授がどこかの大学で行った集中講義のプリントらしかった。学部を出たばかりの学生には未知の概念や数学が使われているらしく、式変形を追うことすら困難だった。自習しようにも、概念や手法の名前すら分からないのだから、どんな本を読めばよいのかも分からなかった。
 当時の同級生や先輩に質問したりもしたが、ちゃんと分かっていた人はほとんど居なかったように思う。せめて教科書か参考書が欲しいとずっと思っていた。教官にも教科書や参考書がないか訊いたと思うが、特に何か紹介してもらったことは無かったと思う。
 内容がぼんやりと見えてきたのは、他の研究室の人に教えてもらった非線形分光学の教科書(ムカメル本)をかじってからだった。どうやら密度行列や経路積分グリーン関数が関係しているらしい。
 今回のように今さら関連の専門書を買ってしまったりするのも当時のウラミが忘れられないからだったりする。