『マンガ 物理に強くなる』

マンガ 物理に強くなる (ブルーバックス 1605)
関口 知彦 (原作)
講談社
売り上げランキング: 209

期待に違わずなかなかの良書だった。さすがプロのマンガ家が描いているだけあって物理抜きでもちゃんとマンガとして読める。今回は、野球部のエースである主人公デンチューが、物理の赤点(=補習)を回避して夏の大会に出るために、同級生の才媛・久保聡美に教えを乞うというストーリー。
なおタイトルは「物理」となっているが、内容は力学に絞られている。おかげで単位計算からコリオリの力、慣性質量と重力質量の区別から、さらには相対論の入門まで実は結構本格的だったりもする。
さらに内容を絞ったおかげで無理のないペースでしっかりと説明が進む。基本的に電車やボールのようなイメージしやすい具体例を使って説明が進む。この例の出しかたかかなり上手い。一読では分からなくても、もう一度読み返してちょっと考えれば誰でもイメージできるんじゃなかろうか。
本書では数式の使用は控えられているが、まれに現れる時にもデンチューがきっちりつまづいて、聡美がきっちり説明してくれる。実際、読んでいて「あ、ここは知らない人にはちょっと難しいかも」と思ったところでは、ほとんどこのパターンで聡美のフォローが入る。このあたりの配慮はさすが原作者が本職の高校教師なだけはあるなと感心した。
正直なところ、力学という地味なテーマをここまで軽やかに語れるものかと驚いた。中学生・高校生はもちろん、何かの拍子にふと物理学に興味を持った人に気軽に読んでもらいたい。

ガリレイは言いました。どうせ減るもんじゃなし。