http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/part-timer.html

私の信州大学時代の教え子T君は、博士の学位を持ち、現在50歳だが未だに定職に就くことができず、無給で研究を続けながら日々の生活の糧を数校掛け持ちの非常勤講師で得ている。一つのケース・スタディとして、かれのこれまでの経緯と現在の状況を詳しく紹介したい。

こういう境遇の人がいるらしいことはたまに聞くことはあった。

ただひとこと救いのようなものを感じたのは、T君の場合、こうした厳しい状況にありながら、物性研の外来研究員としてある研究室に所属し、そこで研究を継続しているということである。

自分はここまでの熱意は持てなかった。このT氏は職には恵まれないものの、良い研究体験をされてきたのかも知れない。

ちなみに、本題からは少しずれるかもしれないが、以下の主張にはとても共感した。

われわれが若い青年男女に物理学や科学の魅力を伝えてかれらを物理学や科学の世界に誘おうとする以上、かれら新しい参入者が学業を終えて独り立ちして社会に出ようとするとき、かれらを受け入れる社会的ポストが創出されていることをわれわれ自らの責任として果たさねばならぬ。その覚悟・その見通しを欠いたまま、ただ一時のムードや高揚でこの勧誘を行うならば、それは無責任であるとの謗りをまぬかれ得ないであろう