『ソニー最後の異端』

ソニーの「2大異端」の一人であり、「WEGA(ベガ)」「BRAVIAブラビア)」に搭載されたデジタル高画質技術「DRC」の開発者である近藤哲二郎とソニーのテレビ事業の伝記。
社内随一の特許数をもちながら、周りとの人間関係がうまく行かずにいた近藤氏の技術を見出してテレビ事業の復活をはかるところに、(「普通という病」に冒される前の)ソニーの懐の深さを感じた。
特に、「変人研究者」である近藤氏を生かすためには、「経営トップの支持だけではなく、間に立って精神的な支援者が不可欠」という出井社長(当時)の考えは印象的だった。優秀な技術者が飼い殺し状態になっている企業にはこういう支援者が足りないのだと思う。近藤氏の場合は、専務(当時)の河野文男氏がその役を担って近藤氏の技術を生かす体制が整えられた。また、近藤氏に対しても無益な軋轢を招くような態度を改めさせたと言う。
このように、技術者の才能(タレント)を生かすためのマネジャーがいたことがDRCの成功に不可欠だったのだろう。

企業の技術者として自分を生かすために何が必要なのか、色々考えさせられる本だった。