『社員を働かせてはいけない』

経営コンサルタントによる経営者(管理職)向けの若手社員の扱いについての本だが、若手や部下が読んでも参考になる。
著者は、社員を辞めさせないためには社員の信頼を得ることが必要だと言う。そのために、金銭的な報酬をちらつかせるよりもその会社でキャリアを積むことを勧め、そしてそれが可能になるように社内を整備せよと言う。

「会社のために一生懸命働いてくれ、そうしたら君の収入も増える」こんなことを言っても逆効果だ。「所詮、あなた(経営者)が儲けたいだけでしょ」ということになる。若者の会社に対する不信感は強い。

社員を大切に思えば、「勉強しなさい、仕事を大切にして、キャリアアップしなさい」は愛情表現だ。

どのようにキャリアを積むかについても「キャリアの階段」の図で表現されており、キャリアプランをどのように提案すればいいのか知りたい経営者だけではなく、社員が自分が今どの段階にいて次に何を目指せばよいかを考えるのに役に立つ。と言うか、キャリアを提示するという意識をもつ企業が多くない現状では、社員にこそ有用だろう。
本書の参考文献に梅田望夫氏の『ウェブ時代をゆく』があげられているようが、たしかに著者の考えは梅田氏の主張のある部分に近いように感じた。『ウェブ時代をゆく』に刺激された人で、当面の間企業で働くつもりの人にお薦めしたい。
なお著者が女性ということもあってか、女性のキャリアプランについてもページが割かれている。仕事に悩む女性にも何らかの参考になると思う。

そういえば「会社のために一生懸命働いてくれ、そうしたら君の収入も増える」って前に言われて思い切り白けたっけ。こういう言い方が逆効果だと分かってるだけでも著者がただ者でないと分かる。今いる会社も、人件費を削る悪知恵ばかり唆す会計士ではなくて著者のような経営コンサルタントを雇ってくれないものだろうか?

社員を働かせてはいけない (ベスト新書 175)
蛭田 敬子
ベストセラーズ (2008/02/09)
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