『なぜ若者は「半径1m以内」で生活したがるのか?』

本書の「半径1m以内の生活」とは、こじんまりとした暮らしの比喩で、手を伸ばせば必要なものを取れるくらい狭い部屋のことではない。ひきこもりのことでもない。
本書を読んでいて気が付くのは類書に比べて、年配者の先入観の匂いが少ないことだ。著者もそれなりに今の若者に対して物足りなさを感じる部分もあるようだが、「ナットラン」で片付けるのではなく「良いところもあるし、それもありかなあ」という立場をとっている。こういう態度が年長者としてフェアな態度だと思う。
自分達の若い頃の価値観を押し付けるのはもちろんだが、逆に「うんうんチミ達の気持ちはよく分かるよ」などと迎合されても気持ちが悪い。「分かった気でいるだけ他性質が悪い」と反発を招きかねない。立場や世代が違えば意見が異なるのは当然であり、違うからこそ互いの特徴が浮き彫りになる。「人の振り見て我振り直せ」と言うか、己を見直すための鏡として互いに利用するのがベストなのだと思う。

ちなみに、私は著者の想定している若者の年齢範囲にぎりぎり入ってはいるのだが、本書中の若者とはあまり共通点が無かった。ちなみに2歳下の弟を想定してみると、そこそこ当たっているように思える。
これはやはり私も既にオッサン側ということなのだろう。ちょっと残念。