『あなたはコンピュータを理解していますか?』

これは良書。コンピュータの初心者より、ある程度コンピュータを使いこなしている人が読むと目から鱗がぽろぽろ落ちること請け合い。一瞥して「簡単過ぎる」と感じる人でもゆっくり読めば、意外と得るものがあると思う。

本書が他の多くのコンピュータの入門書と一味違うのは、扱っている内容が思いのほか高度であることだ。本書では情報のエントロピーや有限オートマトンやキャッシュと言った内容を扱っているが、それらの解説にインスタント味噌汁や升などの喩えが巧みに使われている。内容もさることながら、一般向けに物事を説明するときの"説明術"として見ても、非常に参考になる。
ちなみに私のお気に入りはマウスとキーボードをパソコンの立場から見たときにどう見えるかを蛍と視力検査表で喩えていることろである(詳しくは実際に読んでおくんな)。

最終章ではやや本論から外れて、コンピュータと社会の未来予測が述べられているが、実はこの章は本書の白眉である。最初から順に読んでいって途中で止めるくらいなら、最終章だけ読んだ方が得るものが大きいのではないかという気さえする。
この最終章では、コンピュータが発達することで社会や労働がどう変質するかについて著者の予測が語られている。コンピュータによる効率化の先に何があるのか。「機械がオラ達から仕事を奪う」と嘆く前にぜひ一読を。短い章ではあるが、コンピュータに関わらない人も含め高い価値があると思う。


P.S. 著者の読書観や本の選び方については非常に共感した。