『「法令遵守」が日本を滅ぼす』

これはすごい。大人のタシナミとしてぜひ読んでおきたい一冊。
本書の主張をおおざっぱに要約すると、法律は必ずしも現実社会に即したものではないから、盲目的に法律を守ろうとすると現実との乖離が大きくなるとになる。まず法律ありきではなく、社会をうまく運用するために法律がある。理想的には、法律の理念を理解した上でそれを遵守し、法律が実態にあわなければこれを修正していくべき。だが、こと日本では、社会の変化を法にフィードバックする機能が十分ではない。そのため時代にそぐわない古い法律がいまだに残っている原因である。時代に合わないままで運用するために法解釈を曲解しまくっているのが現状である。ってところだろうか。
政府も企業もマスコミも国民も、そしてもちろん法曹界も、現実を制御するためのツールとしてのルールを考え直す必要がある。

それにしても「裁判官=巫女 説」は笑える。

こういう法律家の存在は、例えていえば、かつての農村社会での巫女のようなものでしょう。(中略)農村の日常の仕事の中では、巫女が登場することはありません。
しかし、(中略)特異な出来事に直面したときは、霊能力を持った巫女に拝んでもらって解決しようという話になります。唱えているのはさっぱりわけのわからない呪文ですが、ほかに解決の手段がないので、巫女の言うことに従うのです。
日本の司法の世界も同様で、非日常的な場面で役立つ「霊験あらたかな儀式」であることに存在の本質があったのです。

判決文があんなに分かりにくく文法の破綻した文章で書かれているのは呪文だったからなんですね。

「法令遵守」が日本を滅ぼす (新潮新書)
郷原 信郎
新潮社
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