『金融マーケティングとは何か』

非常に読みやすくて面白かった。
外貨預金、投資信託、保険と様々な金融商品マーケティングを手がけた著者が、広告の使い方、アピールの方法について述べている。金融商品マーケティングについての本だが、基本的な考え方はほかの商品であっても使える。マーケティングや営業の仕事をしている人は必ずや参考になるだろう。特に理系出身でこれらの仕事をしている人たちにはぜひ一読を薦めたい。
著者のやり方に一貫しているのは、「仮説を立て」、「実行してみて」、「検証する」という手法である。*1実はこの方法は和田秀樹氏の言う「科学的手法」「理系の手法」なのである。自然科学や工学でも仮説を立て、それを検証するために実験を行い、得られたデータを検証するという方法を取る*2。著者は商学部の出身であるが、科学的な手法を広告という社会学的な対象に適用して成果を挙げることができた。まがりなりにも理系出身者である私には非常に参考になり、かつ感服させられた。
和田氏は理系的、文系的な考え方は大学の学部とは関係ないと主張しているが、本書の著者はまさにその好例と言えるだろう。

*1:検証のためには広告の効果を測定しなければならない。これは簡単なことではない。

*2:あくまで原則として。現実的には大学では「意味もわからないまま教官の言う実験をする」だけであることが多い