両親に加えて、いつものように叔父が手伝いに来てくれていた。
稲刈りの主役になる農業機械はコンバイン*1だ。コンバインは、その前部にあるカッターで稲を根元から刈り取りながら田んぼのなかを進んでゆく。刈り取った稲はコンベアでコンバインに取り込まれ中央部の脱穀機構で籾をふるい落とされる。脱穀された稲(藁)はコンバインの後部のカッターで寸断され、後ろに放出される。ふるい落とされた籾はコンバインの側面につり下げられた米袋に入っていく。米袋が一杯になるとコンバインはアラームを鳴らして走行を停止するので、運転者は米袋を交換する。一杯になった米袋は口を閉めた上で横に置いてゆく。一杯の米袋ができるたびに軽トラまで運び、軽トラが一杯になったら家の近くになる農業小屋まで置きに行く。
コンバインを運転するのは父親に任せて、一番若い私が力仕事である米袋の運搬を請け負う。と言っても米袋を担いで歩くわけではなく、運搬車という機械に載せて運ぶ。運搬車とはガソリンで動く小型の農業機械で、1m×2mほどの荷台が前についている。足回りはキャタピラになっていて少々の凹凸はものともせずに進むことができる。ちょうど手押しの一輪車のタイヤをキャタピラに替えてエンジンを載せたような感じである。米袋の移動にはこれを使うのだが、運搬車に載せるのと、トラックに積み替えるのは人力でやるしかないので、それなりに力を使うのだ。
午前中に田んぼ1枚をほとんど終わらせ、さらに午後にもう1枚も終わらせた。去年は稲が倒れていたため、水を吸った藁がコンバインに詰まったりして時間がかかったが、今年は幸い機械が止まることがなかったのでスムーズに作業を終えることができた。

最後に稲刈りをした田は、かなりの稲が踏み倒されており、三つ爪の動物の足跡がたくさん残っていた。足跡はかなり大きく、爪の部分の長さは5センチ近くあった。おそらく足の裏の大きさは大人の手の平の2/3ほどあるだろう。三つ爪でこれほどの大きさの足跡をもつ動物とすると、おそらく猪だろう。
しかし、これまでこの近辺に猪が出たという話は聞いたことがない。両親に聞いてもこれまで無かったらしい。猪が出てきた山はバブル崩壊後に開発がストップしていて、今年になって急に食べ物がなくなったとも考えにくいのだが。いったい何が起こっているだろう…。

*1:刈り取りと脱穀を同時に行う機械の通称