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論文捏造

イムリーなテーマの新刊が出ていたので即買い。今読んでいる本を一時中断して大至急こちらを読むことにする。
本書はNHKの特集番組「史上空前の論文捏造」を作成するために行われた取材をまとめたもの。取り上げられているのは、2000年から2002年にベル研での有機物高温超伝導体の開発にまつわるデータ捏造事件。私の専門である物理学の分野での大事件なので見過ごせない。
もちろん捏造は物理学だけではなく(むしろ物理学では捏造はやりにくい)、ここ一年ほどでも、韓国でのES細胞、早稲田の研究費流用、つい先月の阪大の論文取り下げなど、化学や生物学、医学の分野でも不祥事は立て続けに起こっている。いや「起こっている」と言うより「発覚している」と言ったほうが正確だろうか。
これらのいくつかの事件ついて不思議なのが、捏造の内容があまりに稚拙に見えることだ。実際に問題の論文のアブストラクトを読んでみたことがあるのだが、常識的に考えればあり得ない数値が記載されていた。科学の世界では、投稿された論文を他の研究者が匿名で審査する「査読」というシステムがある。なのに、どうしてこのようなお粗末な捏造すら見抜けないのか。そのあたりの事情がずっと疑問だった。本書がこの疑問に某かの答えを与えてくれることを期待したい。