『熱とはなんだろう』

物理学科の3回生以上なら一度は読んでおいて損はない。特に私のように、「熱力学はいまいち分ってないけど今後必要になることも無いだろうからまあいいや」と思っている方は是非読んでもらいたい。そもそも熱力学は学生に人気が無い(ように思う)。少なくとも私は、「量子力学相対性理論といったメジャーな分野と違って熱力学はなんだか古くさい。それに、熱力学は統計力学に含まれていると聞いているし、それなら統計力学だけ勉強すればいいや。そもそも今後熱力学が必要になるとは思えないし。」などと考えていた。また、熱力学の初歩は高校で習っていて目新しさに欠けるというのもあった。
ところがどっこい本書を読めば、熱力学というのも意外と使えるものだということがわかる。(正確に言えば本書には統計力学の内容も少し含まれるているのだが、大半は熱力学の解説になっている。)特に後半のブラックホールの考察は目からウロコだった。熱力学は、物質の内部で何が起こっているかは深く考えず外部から観測できる現象だけを扱う「現象論」である。中を直接しらべることのできないブラックホールについて考えるときに威力を発揮するのは、現象論たる熱力学の面目躍如とでも言おうか。