市場競争のメリットを享受するのは誰なのか

日本人はなぜ市場競争が嫌いか~大竹文雄・大阪大学教授に聞く(上) | 辻広雅文 プリズム+one | ダイヤモンド・オンライン

 市場競争のメリットを享受するのは誰なのか、議論が整理して行なわれなかったからかもしれません。市場競争のメリットとデメリットを、これまでは日本社会全体が、生産者側に立って考えてきました。製造業にしても金融業にしても農業にしても小売業にしても、競争に負け、倒産する者が増えると、かわいそうだ、競争の行きすぎだ、という同情論と同時に競争規制論が沸き起こります。

 しかし、市場競争のメリットは、そもそも競争にさらされている人々ではなく、消費者が享受すべきものです。

 我々消費者は、誤解していました。生産者側の競争の敗者を、弱者として認識し、同情してきました。だから、弱肉強食を叫ぶ政治家を支持してしまいます。ですが、その結果、競争が制限されれば、そのメリットは生産者に与えられ、本当の弱者は消費者になってしまうのです。

 一例は郵政民営化のときの「郵便局の職員がかわいそう」論。
 なんでかわいそうかと言うと、仕事を替わるのが簡単でないから。
 なんで仕事を替わるのが簡単でないかというと、仕事の仕方が企業や組織ごとに特殊化していて、ポータブルなスキルを身に付けることが難しく、またポータブルなスキルが重視されないから。