個人請負契約化とそのために

 昨日のセミナーでも質問があったが、最近、業務の個人請負契約化が一部で進んでいる。

 ITのおかげで労働時間量や勤務場所やノウハウといった縛りが薄れ、もっと流動的な働き方が可能となったから。
 こうなると個人を丸抱えして職場に縛り付けるより、専門性をべたべた切り貼りした方が良いとこ取り出来て効率的だ。もちろん、“出来る人”にとってもその方がメリットは大きい。

 佐々木俊尚氏や橘玲氏も著書の中で、こういったプロジェクトごとの請負契約が今後は主流になることを指摘している。僕も同感。否応なしにそういう働き方が主流になると思われる。

 たまたま上記二人の著書を読んだばかりということもあって、請負契約が主流になるという予測には同感だし、望むところでもある。ただし、そのために解決しておかないといけない課題が2つあると思う。

 一つは城繁幸氏が常々主張している「同一価値労働同一賃金」の実現。請負に外注するためには、その仕事の価値を定量化する必要がある。

 もう一つは、個人が確定申告をやること。自分の生の年収と手取りの差を把握しないまま請負化が進むと、次のような事態があちこちで起こりそうだ。
http://mainichi.jp/life/job/navi/news/20100301ddm013100026000c.html

 だが、給与支払いの内訳を見て驚いた。雇用保険や年金、健康保険などの欄がなくなっていた。会社は「個人事業主なんだから全部自分持ち」。女性は「収入増なんて、社会保険料を払ったらマイナス。正社員で就職したのに、解雇されたようなもの」と唇をかんだ。

 「同一価値労働同一賃金」と「個人で確定申告」ができていないまま個人請負化が進むと、上の記事のように個人に不利な形でトラブルが多発するように思う。
 もっとも、そういう混乱が起こらないと、「同一価値労働同一賃金」も「個人で確定申告」も進まないのかも知れない。

ちなみに

 今日の報道番組「サンデープロジェクト」の特集でも同一価値労働同一賃金が取り上げられていた(特集の主眼は男女格差だったけど)。その中で、連合会長と厚生副大臣がインタビューに「同一価値労働同一賃金は進めないといけないと思います」といった応えをしていたが、映像からは本心ではやりたくない様が見え見えでつい苦笑してしまった。
 特にひどかったのは厚生副大臣で、野党時代に同一価値労働同一賃金の要望を出していたことを指摘されると、「野党のときは理想を語るものだから」と頬被りするつもりが丸見えの応えをしていた。言質をとられて困る気持ちは分からなくもないけど、もうちょっと上手い言い方もあろうに…。