下げない方が簡単

モチベーション:柴田 芳樹 (Yoshiki Shibata):So-netブログ

つまり、いつもモチベーションが維持されるか上がる職場と、いつも下げられてしまう職場です。いつも下げられてしまう職場と言っても、その原因は様々です。

講演や教育とは異なり、職場は顔ぶれが固定されている環境です。したがって、たとえ本人の責任だと言っても、モチベーションの維持や向上を推進することが、管理職には求められるのではないかと思います。

 多くの場合、モチベーションというものは人それぞれに様々なきっかけで自然発生的に湧いてくるものだと思う。家族の笑顔を見てがんばろうと思ったり、友人の活躍に発奮したり、学習したことに刺激を受けたり。
 何がきっかけになるかは個人の性格や考え方、そのときの気分など、複雑な要素が絡んでいる。何をどうやればその人のモチベーションが湧くのか、個人の価値観が多様化した現代では、その法則を見つけ出すのは難しい。
 それゆえに「これでやる気を出せ」と他人が発奮材料を押し付けても、効果が無いばかりか逆効果にさえなりうる。上司が部下にやる気を出させようと昇進をチラつかせたとしても、それを望まない部下モチベーションは下がる一方だろう。
 現実的な方法でモチベーションを上げるには、(組織の内外で)様々な刺激を受ける機会を与え、モチベーションが湧く偶然に期待するくらいしか手は無いように思う。もっとも、戦争や祭りに放り込んで興奮状態にするとか、洗脳で価値観を決定するとかすれば、人為的にモチベーションを操作することはできるかも知れない。しかしそういったことを長く続けると燃え尽きなどの別の問題が起こりかねないし、醒めたときの反動も大きそうだ。
 他人のモチベーションを上げることに比べるれば、下げることはとても容易い。単に、鼻っ柱を折ったり、せせら笑ったり、無視したりするだけで良い。相手の話を理解する必要すらないので、これらは誰にでもできる。こうした雰囲気が常態化した組織では、メンバーの心の器に穴が開いているので、何らかの機会に湧いたモチベーションもたちまち漏れて無くなってしまう。
 結局、メンバーのモチベーションを高く保つには、他人が「上げる」ようとするより「軽率に下げない」ことに気を配るしかないと思う。もちろん「下げない」のもそう簡単なことでは無いけど、それでも自分の行動に気をつける方が相手の気持ちを操作するより難易度はずっと低い。

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宋 文洲
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