半日近く回路が動かない原因探し。はっきり言って無駄な時間だった。既にちゃんと動く基盤があるのに、わざわざ動かない基盤を手直ししようとしてトラブっているのだから。
 今回動かなかった基盤は設計が古く、間違いも多くてそのまま今の装置に組み込んでも動かない。それらの不具合を修正して作り直してどうにか動く*1基盤が既にあるにも関わらず、今回は古い設計の基盤をジャンパ線で強引に動くようにしようとして手間取った。
 それほど高価な基盤では無いのだし、商品にするなら動作する基盤に交換すべきだと思うのだけど、貧乏性というかその場しのぎ体質というか、今の会社ではそれができない。手修正すれば目先の節約にはなるのかも知れないが、ハンダ剥がれや配線ミスの可能性の種をまいているようなもので、長期的には損をする可能性が高い。
 今回も半日ほどかけて突き止めた原因は、ジャンパ線の接続間違いとシリアルメモリICの品番が違っていたことだった。もちろんまだ他にミスがある可能性は否定できない。こういうやり方を続けている限り、手離れの良い製品なんて絶対に作れないと思うのだけど…。

 午後しばらくして、とあるミーティングに呼ばれた。泥沼プロジェクトに加わらないかというお誘いというか説得だった。このプロジェクトで作るものは自分の担当しているソフトウェアに近いものだったのだけど、なぜか正式なメンバーには加えられず、相談もアドバイスも求められたことは無かった。
 これはきっと、自分がこれまでやってきた仕事に不満をもっている上層部が、新しいコンセプトで一から作り直すつもりなのだろうと解釈して、余計な口出しをしないようにしてきた。それでも時々噂は聞こえてきたのだけど、それを聞く限り開始当初からほぼ間違いなく失敗するとしか思えなかった。実際に作業をしている契約社員にはその懸念を伝えたし、彼と外部のアドバイザも上層部に警告を発し続けているようだったので、それ以上深入りすることはしなかった。
 だんだん期限が近づいてきても、心配したとおりあまり進捗ははかばかしくないようだったが、上層部は何も手を打とうとしていないようだったので、失敗しても構わないのだろうと思っていた。
 ところが、とうとう二進も三進も行かなくなったところで急にこちらに声がかかるようになってしまった。最初から責任者なりアドバイザなりで参加していたのならいくらか責任も感じるだろうし、そもそもこんな無茶苦茶な状況になどさせていない。これまで「お前は口を出すな」とばかりに無視しておいてなにをいまさら、というのが本音だし、そもそも経験のない開発ツールを使うという縛りがあるので、どのみち戦力になれる気もしない。せいぜい失敗のスケープゴートにされるのがオチだろう。
 こういう状況に腕まくりして乗り込んでいく人もいるのだろうけど、それでなんとかプロジェクトを軟着陸させたとしても、上層部はまた同じことを繰り返すに決まっている。こんなことを続けても、対外的な信用も社員のモチベーションも凋落していくだけ。

なら、一度ちゃんと失敗して反省の機会をもつ方が社会のためになるだろう。

*1:まだ問題は多いが