大盛りどんぶり

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2700億円の研究基金、支援先「国民の意見聞く」 科技相

 野田聖子科学技術政策担当相は12日、閣議後の会見で、政府が追加経済対策として打ち出した、2700億円の研究基金を設立して最先端の研究を支援する制度に関して、国民から研究強化を期待する技術を募ると発表した。野田科技相は「(研究費の)配分先として30人の研究者を選ぶ予定で、国民の意見を参考にする」と明言した。

 野田科技相は「これだけの科学技術を持つ国なのに、これまでは国民不在だった。透明性を担保する手段にしたい」と述べた。

 将来の日本にとって「科学技術で実現してほしいこと」や「実現すると期待していること」を幅広く公募する。

 総額2700億円を90億円×30件に分けるという特盛りどんぶり行政を本気でやる気らしい。愚策もここまでくると怒りを越えて不気味になってくる。
 まず疑問なのは1件あたり90億円という金額の根拠。この金額は、iPS細胞のようにある程度目処の立った研究の地盤を固めるには少な過ぎ、まだものになるかどうか分からない研究を始めるには多すぎるように思う。今回のように景気対策の一環でもあり、対象があいまいな予算であれば、もっと小口に分けて広く行き渡らせた方が効果的ではないだろうか*1。もしかして、金額が固定で件数が少ないのは、単にその方が官僚の仕事が楽だからなのだろうか。

 そもそも科学研究いうものは水物で、将来的にどの分野の誰の研究が当たるかの予想はそう簡単では無い。今回の予算は「国民に配分先を聞く」とか言っているようなので、素人*2の多数決で投資先を決めるようなものだろう。これではものになる研究が選ばれる確率はよけいに低くなる。であれば、リスクヘッジの意味でも、できるだけ広く予算を行き渡らせての研究の種を蒔くべきではないのか。蒔いた種のいくつかが芽を出せば、その時点で改めてその芽にさらに資金を投入するかどうかを審査してはどうか。100億円規模の予算を組むのはこの段階で良いのではないだろうか。

 研究の現場は人材育成の場にもなっていることが多い。広く浅く予算を分けることは、次代の研究者を育てるためにも意義があるはずだ。優秀な若手や学生の中には、指導者に研究費を獲得する政治力が無いばかりに苦労している人が相当数いる。彼らにとっては広く薄く分けられた研究費であっても大いに助けになるはずだ。

 配分先を決められないというのなら、素人の意見で決めたたった30枚の大口馬券に賭けるよりも、広く浅く人材育成に投資した方が将来的により大きなリターンが得られるのではないだろうか。


参考:http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=2840

現状だと例えば「脳トレ」にもっとお金をとかいう流れになるんじゃないかと、僕なんかは疑ってしまいます。

 あーありそう。単にテレビでよく見るからという理由で選ばれる気がする。もっとも、でんじろう先生やなんかの影響で科学教育に90億円が配分されたらちょっと面白いかもしれない。さすがにマイナスイオンや血液型、言語を理解する水の研究などに配分されることはないと信じたい。

れ以上現場の研究者の士気を下げて、何をしようというんでしょうか? この国の政策を決める人々の考えることは全くもって理解できません。某所でも若手 PIやポスドクの不平不満が噴出している状況なんですが、ここまで来るともう二の句が告げませんね。

 昔から「日本は資源が無いから人材が重要」と散々言われてきたはずなのに、人材育成にも頭脳流出にもこれほど無頓着でいられるというのは日本政府の大いなる謎。

*1:定額給付金よりもこっちの予算をばら撒き式にすれば良い

*2:国民の科学リテラシーは先進国でビリに近い