みんなのために

…つっこみどころが多すぎ。ただの「成果」ではなく「努力」がやたら強調されている時点にものすごい違和感が。
若者はなぜうまく働けないのか? - 内田樹の研究室

一方に引きこもったまま労働しない若者がおり、一方に過労で倒れそうな若者がいる。
いずれも「うまく働いている」わけではない。
どうしてなのか。

一方に会社にしがみついたまま労働しない元若者がおり、一方に過労で倒れそうな若者がいる。
いずれも「うまく働いている」わけではない。
どうしてなのか。

労働は本質的に集団の営みであり、努力の成果が正確に個人宛に報酬として戻されるということは起こらない。
報酬はつねに集団によって共有される。

共有されているなら問題は無い。問題は一部の(職責を果たしていない)連中が報酬を占有していることだ。
確かに報酬の分割は非常に難しく、完全にフェアな方法が無いことも確かではある。それでも出来るだけフェアに分ける努力はしてもらいたい。少なくともそういう姿勢を見せなければ経営層に対する不信を招く。

これは子どものころから家庭内で労働することになじんできている人には別にむずかしいことではない。
みんなで働き、その成果はみんなでシェアする。働きのないメンバーでも、集団に属している限りはきちんとケアしてもらえる。
働くというのは「そういうこと」である。

そういう側面は確かにあって、新人研修などは働きのないメンバーに対するケアに相当する。だが、新人たちが問題にしているのは「働けるはずのメンバー」をケアさせられていることではなかろうか。
そもそも、働けない人をケアするのは社会福祉であって(基本的には)経済活動ではない。
企業は養老院でも保育所でも無く、「働けるはずの人達」が労働力を出し合って価値を生み出す場所である。いつまでたっても価値を生み出さない連中を養う場所ではない*1
それに家族内にも役割分担は存在する。(まともな理由もなく)働かず家事もせずゴロゴロしているだけの大人がいつまでも家族に許容されるだろうか?*2

社会活動としては消費しか経験がなく、「努力」ということについては受験と就活しか経験がない若い人にはこの理路がうまく理解できない。

社会活動としては隷属しか経験がなく、「努力」ということについては効率無視の精神論しか経験がない若くない人にはこれ以外の理路をうまく理解できない。

「職能給への切り換え」や「独立事業部制」を求める若い人は今も多い。
彼らはそうやって仕事を他者たちから分離し、誰からもあれこれ指図を受けない独立の労働圏を確立したら、「はたらく自由」が手に入ると思っている。

「はたらく自由」というより「搾取されないための明確さ」では?

だが、それが彼ら自身の労働条件をどれほど切り下げているか、そもそも労働意欲をどれほど損っているのか、当人たちはまだ気づいていない。

だが、それが無能な上司たちの危機意識をどれほど煽っているか、そもそも既得権益をどれほど脅かしているのか、当人たちは十分気づいた上でやっている。(と思う)


結局のところ、「仕事もしないのに高級を取っているオッサン」と、「報われないからとすぐに辞める若造」とどっちが甘いのかってことだろうか。

*1:価値というのは金銭以外にもある。釣りバカ日誌の浜ちゃんみたいな人がいたほうが良い職場もあるだろう。

*2:最近は文句を言われたら暴力で黙らせるDV夫もいるが