製造業至上主義は正しいか?

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20070515/124837/
技術者の端くれとしては製造業が弱体化していくのは寂しい気はするが、私も日本が製造業中心で生きていける時代は高度成長時代と一緒に終わったと思っている。

「日本は資源が無いから製造業(加工貿易)をガンバルしかない」とは子供のころから聞かされた言葉である。しかし、よく考えれば資源が無くてもできる産業はほかにもたくさんある。例えば日本のマンガ・アニメはいまや世界を席巻している。コンテンツの収入だけではなく日本のイメージアップにも貢献しているかもしれない。
しかし、一部の人達、特に技術者の多くはこういった工業製品以外の商品が輸出されていることを苦々しく思っているようだ。そのうちのある人に「では、何が輸出されていたら嬉しく思うのか?」と質問してみると、「AV機器や電化製品」という答えが返ってきた。これは技術者としては自然な気持ちだとは思うが、製造業全盛だった時代へのいささか時代錯誤な懐古感情にも思える。

現実問題として、かつて世界の中で日本が担ってきた「安くて高性能」な工業製品の中心はアジア諸国に移りつつある。人件費の点からこれは避けられない現象である。では独創的な製品や研究で世界をリードできるかと言えば、とうてい期待できる状況ではない。理系離れで技術者・研究者の志望者が減り続けている上に、大学院重点化や独立法人化といった失政で教官と学生を苦しめ、さらに教授や上司が若者の創発をつぶすことに精を出している現状では期待する方がどうかしている*1

「製造立国ニッポンよもう一度」というのなら、過去の成功体験を反芻するばかりではなく、現在の日本の状況を分析し、適切な舵取りをしなければならない。しかしなまじ成功体験のある分野では、冷静に自らを見つめて自発的に変化するのは難しい。いっそまったく異なる分野を切り開くほうが簡単かもしれない。そういう意味からも産業の中心が時代とともに変化するのは悪いことでは無いと思う。
「作ってナンボ」は卒業すべきだと思う。

IMDの国際競争力ランキング

ちなみに記事中でIMDの国際競争力ランキングで日本が大きく順位を下げたことが挙げられている。2007年は団塊世代の退職と本格的な少子化の始まりが言われる年で、これらも順位に影響したのかもしれない。
http://www.asianstocks.info/ecodata/competetive.htm

涼宮ハルヒ 宋文洲さんの憂鬱

上の記事の最後で宋文洲さんがコラムを書くのがイヤになってきたと書かれているのが気になる。

 最近、「傍目八目」を書くのが億劫になってきました。ついつい他人の意見やコメントを意識し、自分の中でどんどん重くなってきました。今日のこの記事も書くか、どう書くかを相当悩みました。多くの人の常識の中にセイゾウは神聖なるものであるため、「宋がまた因縁つけている」とか、「前向きの提案もないのに」とか言われそうです。

 いつの間にかお伝えしたくてわくわくした自分がいなくなり、読者のコメントばかりが気になる小心の自分がそこにいます。もうそろそろ「傍目八目」をやめる時期になっているサインです。そんな心情で書いた今日の記事ですのでよそ者の寝言として聞き流してくださいませ。

単に書くのに飽きてきたというのなら良いが、日本の読者の感情的な批判・攻撃、頑迷さ、蒙昧さに宋氏が愛想をつかしたのではないかと心配だ。

*1:「そんなことは無い、日本には優れた技術や発明がたくさんある」という人がいる。そのこと自体に依存は無いが、あくまでこれまではそうだったという話であって、今現在もしくは今後の見通しとは話が別である。