近くで応用物理学会が開催中である。会社から行っても良いと許可が出たので、たまたま学会会場である大学に別用で行く社員に便乗してついて行くことにした。
私の大学での知り合いのほとんどは「応用物理学会」ではなく「物理学会」の会員なので今回の学会には参加していないのだが、それでも知り合い3人と会うことができた。しかも偶然なことに3人とも今日が発表日だった。そのうち2人は発表時間がほぼ重なっていたので片方が終わった直後に隣の建物まで走るはめになったが、どうにか全員の発表を聴くことができた。
講演からは、皆の苦労(おそらく主に予算面で)が忍ばれた。彼ら彼女らが昔からどういう仕事をしてきたのか大雑把には知っているのだが、残念ながら今回の発表を聴く限りあまり進展していないようだ。かなり心配ではある。
研究テーマによってその程度は変わるものの、実験装置の拡充度が研究の進み方に与える影響は小さくない。自分でTwo-flow型に改造したMOCVD装置を使って欠陥の少ない窒化ガリウム結晶を作った中村修二氏が言うように、世界で唯一の装置であれば何をやっても世界初の業績になる。反対に、皆が持っている装置とありふれた試料で研究を進めるのは困難なのだ。特に若いポスドクなどは数年ごとに所属が変わるので、うっかり老朽化した装置しかない研究室に移ったら、前より研究のレベルが下がってしまうこともある。なんとかしようと研究予算を申請したくても、若い研究者が獲得できる予算は多く無い。予算の配分を前例主義で決めているのだから当然若手が不利なのだ。
それが研究者の厳しさだと言ってしまえばそれまでだが、せっかくエネルギーがあって発想も柔軟な若い研究者を有効に使うために、もうすこし行政で何とかすべきではなかろうか。